海外技術に学ぶには、外国語から日本語への翻訳に利用する辞書が要求されます。明治以降、その外国語に当たる和語の語彙が無いことが多かったので、それに当てるため、多くの漢字の熟語が造語されました。漢字は、和語に比べて抽象的な意味を持つ語が多く、熟語を作る機能が高いからです。漢字は、元はと言えば、中国からの輸入語です。日本で作る熟語は和製漢語と言い、本場の中国語の造語習慣と異なるものもあります。和製漢語を提案して学者は、漢学の素養がありました。そのこともあって、専門用語などは、中国でも使う例があります。日本語にない事物には、元の言葉の発音を元にしたカタカナ語の借用語が使われます。これが増えると、意味不明の日本語になります。カタカナ語辞典と言う不思議な辞書があって、その目的は、元の語の正しいスペルを教えます。辞書と言うと、例えば、「dog⇔犬」とすることと考えますが、これでは何のことか分からないことが起こります。そこで、dogとはどういう動物か、その定義や概念を説明する辞書が必要です。こちらが、百科事典(encyclopedia)や用語辞典(glossary)です。岩波の広辞苑は、百科事典の性格があります。データベースを作成したり利用したりするとき、文科系の学問と考えていた言語学の領域まで勉強しなければならないことは、理科系の研究者の予想に無かったことです。
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