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2. 文字処理と英語用語の理解

2.7 データベース作成の前段階


2.7.3 実体を見る手段にマイクロフイルムを使う

 学術論文に引用する論文は、著者名・論文名・発行元の情報だけす。中身の簡単な紹介(抄録)があれば、一つ一つ原典を見る手間が省けます。論文発行機関では、抄録を集めた抄録誌を発行していました。古い論文では抄録を付ける習慣がなかったからです。最近の学術誌は、著者の方で抄録をまとめ、さらに分類に使うキーワードを付けるように投稿規定が決まっています。この抄録をデータベースの材料に使います。しかし、論文本文を見たいととしても、身近の図書館に原本がないとき、別の図書館に依頼してコピーしてもらいます。コピーを依頼される側では余分な仕事ですので、それを引き受けるビジネスがあると便利です。アメリカでは、University Microfilms International (UMI)がマイクロフィルムサービスを引き受けています。この手段の一つに、1960年代、フランスで開発されたマイクロフィッシュ(図2.1)が利用されました。葉書き大のマイクロフィルムに最大で60ページ分を収めることができます。マイクロフィッシュからマイクロフィッシュの複写コピーを作ってユーザに郵送します。ユーザ側では、簡単な光学的ビューアを使って読むか、自分の費用でハードコピーを作ります。カードのような保存と利用ができます。参考文献に学位論文が引用されていて、図書館で現物が見られない場合にも対応できます。マイクロフィッシュの利用法として、何かの特定した研究課題に関係した論文やデータだけを選択して、マイクロフィッシュの形で研究者に配布する使い方もします。1960年代には、かなり普及したのですが、後始末的なデータ管理の道具ですので、日本ではこれも熱が冷めてしまいました。UMIは、電子化文書でのサービスをするように進化しています。電子化文書の利用は時代の流れでしょうが、印刷形式、つまりハードコピー化した実体を直接眼で見て調べる手段が失われると、資料管理で大きな危険をはらむことが危惧されるようになっています。

図2.1 葉書き大のマイクロフィッシュ。スキャナでもページ単位を読むことができます
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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