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2. 文字処理と英語用語の理解

2.4 システムズエンジニアリングの理解


2.4.3 システム工学と訳したことによる誤解

 日本でも、システムズエンジニアリングを、アメリカに学び始めました。筆者の持っている古い参考書は、1961年、日本能率協会EDP委員会が訳して発行した「ORとシステムズエンジニアリング」です。EDPは、汎用コンピュータを経営の合理化に応用する意義を持った実践技術を意味します。実務と距離を置いた大学などの研究者は、取り上げ難い内容を持っています。その中の個別の話題として、例えば、ゲームの理論など、理論と銘打った話題については、理工系の研究者が取り上げていました。システムズエンジニアリングを「システム工学」と言い換えて研究対象に取り上げたのですが、単数形のシステムと使い、「学」の字を使ったことが誤解の始まりです。「学」というのは、「真似ぶ」の転化した語と言われ、過去の事例を研究する意義が強いのです。これから実行する何かの未来計画は、過去の経験を参考にはしますが、意思決定はシステムのリーダーが下さなければなりません。失敗する危険もありますので、システムズエンジニアリングは危機管理(risk management)ともセットです。危機管理も生臭い決断を伴います。過去の失敗例を取り上げる研究を「安全工学」と言い替え、学者の格好の研究テーマにしています。複数の部局を個別のシステムと見れば、その総合としての企業全体はシステムズです。その最高責任者は、全体システムを、一つの進路に導くため、孤独な帝王学的な素養が要求されます。インテリは「歴史に学べ」と言いますが、視点が過去にありますので、現実的な提言をしません。実務者が採用する最も無難な提案方法は、合議を経た前例に倣うことです。設計作業は、未来志向です。未知の事象に挑戦するにしても、過去の事例を研究することも重要です。ここにデータベースの合理的な利用が必要になる、という筋書きに繋がります。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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