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2. 文字処理と英語用語の理解

2.3 英語用語の使われ方


2.3.1 用語の意味と使い方に注意が必要であること

 コンピュータ技術はアメリカ主導型で開発されてきましたので、用語の大部分は、元がアメリカ英語です。市販のコンピュータ関係の参考書を見るとき、英単語を日本語訳にしないで、そのままカタカナ読みにしたものが多く見られます。そのカタカナ語をさらに詰めた使い方もします。例えば、パーソナルコンピュータ(personal computer)は、パソコンと使うのが普通になりました。英単語を併記すれば、未だ手掛かりがありますが、PCなどのように頭文字だけで構成した頭字語(acronym)が厄介です。ありきたりの日常使う単語も、専門によっては特別な定義を持たせて使うことがあります。PCなどの頭字語は、英米人にも説明が必要です。これらは専門用語ですので、辞書(dictionary)または事典にまとめます。専門用語は学問的な意義で理解されますが、普通に使う日常用語ではなく、言わば業界用語、職人言葉、方言(dialect)、悪く言えば隠語(slang)と同列です。したがって、その専門ごとに意味や使い方を限定したものを、用語解説(glossary)にまとめます。専門用語には、標準の語彙とは違うスペルもあります。アメリカ英語から見れば、イギリス英語は方言(dialect)扱いです。同じ意義であっても、専門違いで別の用語を使うことがあります。コンピュータ関係で使う用語は、3種類を使い分けます。
  1. 人に説明するときに使う専門用語:
    コンピュータのハードウエア、ソフトウエアの説明書(マニュアル)では、始めに、そこで使われている専門用語の意味を約束します。ただし、既知と考える用語が抜けることがあります。また、日常会話で普通に使われている単語であっても、意味を限定していることがあります。これらは専門用語ではないのですが、日本語の環境では特別な用語になることがあるのが厄介です。これらの用語は、元の英語と共に、自国の言語に翻訳した用語を決めます。適当な日本語訳ができない時、英語読みをカタカナ語にします。これらは、自国の言語ごとに、解説辞書(glossary)、用語辞書が作られます。
  2. コンピュータを人に見立て(擬人化し)、コンピュータ本人が理解する言語:
    この代表がプログラミング言語です。こちらは、正確に元のスペルで使わなければなりません。これを予約語(reserved word)と言います。これも英語の方言の性質がありますので、日本人にとっては厄介な代物です。データベースの方では、キーワード(keyword)と言います。定義が決まったキーワードは、分類を決めて索引などに利用します。キーワードの辞書がシソーラス(thesaurus:専門用語辞典)です。分類法それ自体も、一つの学問分野を構成しています。アイコンとマウスを使うインタフェースは、言葉が分からなくてもコンピュータが使える方法です。これがGUI(Graphical User Interface)です。文字を入力することでコンピュータに知らせる方式は、GUIと区別するため、後からCUI(Character User Interface)の用語ができました。これらを、Man-Machine-Interfaceとも言います。事務処理では女性が多く働きますので、MANを使わないUser Interfaceの方が、抵抗がないようです。
  3. ユーザが、自分で決めて使う用語:
    代表的なものが、変数名です。これも、コンピュータに、それ と理解させなければなりません。プログラミング言語では、変数名を使うとき、プログラミング文の最初の方で型名と共に宣言しなければなりません。これは面倒な儀式です。初期のFortranやBasicでは、暗黙(デフォルト)の型定義の変数名を宣言無しに使うことができました。これは、代数式を書くときには普通の方法です。プログラミング単位が小さい時には、この約束がユーザにとっては便利です。しかし、コンピュータ側から言えば、判断に困ることが起こり、計算エラーの原因になります。最近のプログラミング言語では、これを避けるため、変数や定数の、定義と宣言の儀式が複雑になりました。
この他に、コンピュータを使う側の専門ごとに、固有の用語があります。なるべく統一した用語にしたいとする努力は、専門ごとの団体や学術的な学会で試みられていて、JISとして標準化も提案されます。マニュアルの作成は、上のことを踏まえますので、一種の規則書、法律文書の形になります。そのため、初心者の教育には、入門書(introduction)、ガイドブックなどを別に工夫しなければなりません。プライマー(primer)の用語も見ることがあります。JIS本体は、目次も索引も作成しませんので、教育用の参考書としては使い難い文書です。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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