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1. データベース構築までの背景

1.3 古典的な整理方法


1.3.9 事故や災害で失われる資料も多いこと

 筆者の縁者には、関東大震災のとき、戸籍情報が焼失し、さらに空襲でも被害を受けました。お寺には過去帳がありましたが、そのお寺も焼けてしまいました。分かる範囲で戸籍の復元はしましたが、御先祖さまの記録が分からなくなりました。重要な資料の保存は、歴史に堪えることが必要です。東北大地震とそれによる津波で、役場の資料が全滅した所がありました。この地震の規模は1000年に一回起こる確率だそうです。しかし、地球の何億年の歴史を考えれば、瞬き程度の短い期間です。この10年くらいの間に、比較的気候が安定していると考えられていたヨーロッパでも、大きな河川の氾濫が何度か起きました。地下室に書庫を設けていた図書館が、大きな被害を受けました。戦争のような人為的な破壊による資料の損失もあります。日本では、大学紛争で占拠された施設や研究室で、多くの重要な書類が被害に遭いました。資料のバックアップの計画は、やや高い見識を必要とします。公的な費用を期待するときは、法律による縛りが必要ですが、よいビジネスモデルの有る方が長続きします。多数決で計画を決める場面では、価値観が庶民レベルで判断されますので、否定的な扱いを受け易い面があり、計画が中止されることもあるからです。戦争では、美術品の略奪が行われるのが普通です。この場合、略奪されても、実体またはレプリカが別の個所で保存されていれば、長い眼で見れば救いがあると考えることができます。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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