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1. データベース構築までの背景

1.3 古典的な整理方法


1.3.8 保存用のハードウエア

 一次資料も二次資料も、保存場所と保存のための入れ物の用意が重要です。倉庫の必要性については、1.2節の始めに触れました。そこには、さらに入れ物を使います。日本の気候は湿気が高いので、湿気を遮断できる入れ物の工夫があります。伝統的な日本の保存具は、桐のタンス、桐の箱を使います。一歩譲って木製の長持があります。これらは、嫁入り道具の定番です。筆者は、内側にブリキを張った長持風の茶箱を衣類の保存用にも使っています。欧米人は、日本の古い家具の愛好家が少なくありません。木製の入れ物は、入れる方の物に対して傷を付けない、などの優しさがあるからです。最近では、実用的なプラスティックの入れ物が豊富になりました。しかし、鉄製の入れ物は保存用具にはあまり見かけません。これらは、製作が特殊になります。汎用性が無いことも理由ですが、日本では腐食が問題になります。この点では欧米諸国では湿気の問題をあまり考えませんので、事務用品としても各種の鉄製のキャビネットが使われています。家具として見ると、単純な塗装は装飾性や温かみがありません。日本では木目を描いた壁紙などで表面を飾る製品を良く見ます。資料の点数が大量になるとき、保存用の入れ物単位は、なるべく単純なデザインで、追加ができる機能性が重要です。見てくれはよくないのですが、昔は木製のリンゴ箱、最近では段ボール箱が、規格の揃った入れ物として実用されています。保存場所は、空間利用を考えた書架のような頑丈な棚を備えます。見えるように保存し、ほこりや湿気を防ぎ、さらに盗難などを防ぐため、オプションとして外側にガラス戸を付けることもあります。高さ方向の利用ができないときは、平面的に並べるしかありません。この状態を、小間物屋を開くと言うことがあります。これが整理の乱雑さの元凶です。整頓は、高さ方向に積み上げて、自由平面を増やすのですが、これは整理ではありません。空間を有効に使うために入れ物が必要になります。図1.1に示したホールソートも、その入れ物が特殊な構造になることもあって、結果的に普及しなかったのです。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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