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1. データベース構築までの背景

1.2. 整理と保存の現実


1.2.3 公私の区別をすること

 個人が書物資料を保存して利用する場合は、所蔵点数としては知れています。趣味で骨董的に私蔵するのではなく、実質的な利用を目的とする場合の仕分けを、三種類に分けて考えることができます。
  • 一度読めば済む一過性のもの(小説・新聞・雑誌など);
  • 他人も含めて、何度も利用するもの(辞書・参考書など);そして
  • 消耗品的に使うもの(教科書・演習目的のテキスト類・コピーした資料、ノートなど)です。
最初のものは、多くの部数で発行されますので、時期を見て廃棄します。全体保存を考えるのは、本来、発行元の責任です。公的には、特に国立国会図書館が保存図書館として大きな貢献をしています。2番目の扱いには、資料を利用する人の価値観に左右されます。最後のものが私物です。書き込みなどをして汚します。物を大切に扱うことは美徳です。汚して使うのは消耗品扱いです。こちらは本人の責任で、保存か廃棄かの判断をします。大学の研究者が書物資料を保存する場合、公私を区別する意識が薄いようです。退職などで、資料や蔵書を処分しなければならなくなったとき、私物を図書館などに寄贈する例もあるのですが、受け入れ側が迷惑することが少なくありません。その理由は、余分な保存空間と、目録を作るなどの作業が必要になるからです。保存利用を考える場合は、図書館を介して公的に分類・登録した上で私的に借り出す形にしてあれば、この問題の大半は解決されます。共通に利用できる小規模の共通図書室でもあれば、一過性の閲覧利用ならば実質的には便利です。しかし利用者(ユーザ)の利用方法(マナー)で問題が多く発生します。個人が書物を排他的に保存したがる理由の一つが、このマナーにもあります。コピーが便利でなかった頃、盗難や紛失もありますが、かみそりでページが切り取られる被害に悩まされたものです。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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