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1. データベース構築までの背景

1.2. 整理と保存の現実


1.2.1 整理法を教える組織的教育がない

 公私に関わらず、我々は、日常的に、何かを探す作業と、保存と再利用を目的とした整理作業に多くの時間を取られます。一般に、整理が良いと言うのは、行儀作法的な素養が関係します。しかし、合理的な整理方法を教育することは、従来殆んどありませんでした。合理的な整理をするためには、保存の空間を別に必要とします。欧米をはじめ、冬の寒さが厳しい所では、冬籠りを考えて、物を溜め込む倉庫の空間を持つ習慣があります。日本の住建築は、従来は、開放的で多目的に応用します。押入れを個別の部屋に設けます。それでは足りないとき、収納用の家具を持ちこみますので、その分だけ部屋が狭くなります。夏炉冬扇と言う言葉があります。収納場所が別に無いので、夏冬で別に使う道具が一部屋に同居した状態の意味に理解することもできます。公共的な建築物でも、倉庫の空間を最初から準備しておく設計習慣がありません。また、その空間があったとしても、そこを機能的に活用する技法も、経験的に覚えます。廊下や通路を物置のスペースにするのは、よく見かける光景です。大学の研究者は個室を欲しがるのですが、公的な空間を私的な物置のように使っているのが常態です。原則として、公的な場所に私物を持ちこむべきではありません。また、公的な資料を自宅に持ち帰って作業することもしません。このことは、一般企業の作業環境ではごく普通の規則です。図書館は、書物を公的に整理保存する機関です。図書以外のものを保存する施設が博物館(museum)、美術館などです。これらは一般向けに展示の空間を持ちますが、それを支える大きな、かつ、安全な倉庫と作業用空間が別に必要です。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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