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1. データベース構築までの背景

1.1 軍事研究に始まったコンピュータの開発


1.1.3 資料と情報の用語の意義

 データベースは、軍事作戦遂行に必要なデータを集めて、分析に利用するための施設を作ったことが出発です。古くは、諜報活動と言い、スパイ活動に関連した意義で使いました。これに和製漢語の情報を当てたのは、軍医でもあった森鴎外(1862-1922)である、とするのが定説です。これは、「敵情報告」の中央の二字を取ったものと解釈されています。情報に英語のinformationの訳を当てたのは正解ですが、コンピュータを利用することと同義に解釈されることが多いのが混乱を伴うようになりました。情報は抽象的な概念です。より具体的な意味を持たせるときは、データ(data)と使い、漢字では資料を当てます。英語の dataは、datumの複数形です。 informationと同じような集合名詞の意義で使うようになりました。英語辞書の説明にはcollection of factsの説明を見ます。ここで、 factsと複数形で使っていることに注意します。英語の名詞は、単複を神経質に区別します。したがって、情報またはデータの、さらに複数の集合を表す表現が必要になるとき、物質名詞なみに、例えば、two pieces of information の言い方を見ます。 Collectionも集合名詞の性格を持ちます。加算名詞として、集合の、そのまた集合の意義を持たせて複数形でも使います。データベース(database)は加算名詞ですが、集合名詞の意義を持ちます。そこで、データベースの集合に対して二つの言い方が必要になりました。一つは施設またはシステム単位で勘定するdatabasesの複数形で表すとき。二つには、中身の data集合の、そのまた集合を意味したいときの言い方です。後者に対しては、repository(レポジトリ)の別用語を見ます。リレーショナルデータベースも一つの形態です。英語のfactも、訳し難い抽象概念です。事実と当て、客観的に記録したもの、とします。記録の段階では、恣意的な選択もありますが、感情的な主観または意見が入っていないとします。ちなみに、論理的な実用文書をまとめるときの作文は、事実と意見とを峻別することの教育が必要です。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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