目次ページ  最初のページ  次ページ

1. データベース構築までの背景

1.1 軍事研究に始まったコンピュータの開発


1.1.1 弾道計算の高速化が主目的であったこと

 悲しいことに、多くの科学技術は、殺戮と破壊を目的とする軍事研究に応用することで、豊富な予算が使われてきました。コンピュータ(電子計算機:electronic computer)技術も例外ではありません。その主目的は、高速で移動する敵の軍用機を撃墜する高射砲の制御をするとき、軍用機の位置と速度などの測定データを利用して、狙いとタイミングを素早く計算して弾丸を発射することにありました。日露戦争(1904-1905)の日本海海戦では、軍艦に搭載した巨大な大砲の制御が必要でした。軍艦の動きは、航空機に比べれば低速ですので、そろばんなどを含めた単純な計算機械を使った手計算で行われました。この技術を砲術と言い、数値計算の専門家が養成されました。原理は、力学計算を踏まえた弾道計算です。現在では、人工衛星の軌道計算がその延長です。開発当初のコンピュータは、巨大な設備でした。これは、軍艦に搭載することも考えにあったようです。世界最初のコンピュータは、アメリカのENIAC (1946)とされています。しかし、軍事機密として隠されていた装置が、既にイギリスでColossus(コロッサス)として開発されていた、と言うのも定説です。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

最初のページ  次ページ