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G8. 誤字、当て字 (Misspelling)

 誤字、当て字をしないように注意を払います。英語ではスペルの誤りを検査することですが、日本語は漢字を使うため、常用漢字の範囲での正しい用語や、送り仮名の規則などと照らし合わせた物理的な検査が必要です。このための資料は膨大になりますので、ここでは、以下に示すように、論理的にみて不都合になる誤字、当て字について解説します。基本的な姿勢は、辞書や専門用語集などでこまめに言葉を確認することです。

(1)
原稿にある明らかな誤字、当て字は、誰でも過ちであることを認めます。話し言葉のときは、読みの過ちにも注意します。意識して自分流で作る造語があるときには、細心の注意が必要です。これは、一面では言葉を乱す犯罪を犯す危険があり、別の面では、オリジナルな表現として尊重されることもあります。

(2)
思い込みや習慣で犯す誤字、当て字は、すぐに気が付かないことがあります。第三者に見てもらって、はじめて気が付くことがあります。例えば、「危機一発」(髪)、「もて遊ぶ」(玩ぶ)、「立たずむ」(佇む)、「動めく」(蠢く)、「さか上る」(遡る)、「下げすむ」(蔑む)などです。

(3)
話し言葉では、方言の違いにも注意します。東京の方言は、「ひ」が「し」に発音されるので、おしさま、しのまる、しろしま、などと誤ることがあります。関西では、質、七を「ひち」と発音しています。このほか、濁音と清音の使い分けなどがあります。

(4)
日本語のワードプロセッサを使うようになって、漢字変換で出てくる同音異義語の誤字や当て字が増えました。基本的な姿勢は、原稿をよく見直すことです。例えば「人工衛星」を「人口衛生」と誤るなどです。

(5)
人名、企業名、地名などの固有名詞には、正確な引用が必要です。漢字には新旧字体の区別があるものが多く、字体を指定されることがあります。例えば、「鉄」と「鐵」、「辺」「邊」「邉」などの違いに神経質なことがあります。

(6)
古くから伝えられた格言、ことわざなどを、自分流に改変したり、冗談で言い換えたりすることも、誤字、当て字をすることと同じ過ちと考えるべきです。現代的に言えば著作権の侵害です。

(7)
外国語をカタカナ語の読みにして表記することが増えています。日本語化した用語や、専門用語として固定したものを除き、気分で(ムードで)使うのを避けます。必要な場合には、元の綴り(スペル)を併記するのが正しい引用になります。

(8)
カタカナ用語は、言葉のユレに注意します。例えば、ワードプロセッサ、ワードプロセッサー、ワードプロセサ、ワード・プロセッサ、ワープロ、などの様な混用を避けます。どれを選ぶかは、学術用語集などによって調べます。

(9)
ワードプロセッサ、マイクロコンピュータなどを、ワープロ、マイコンなどと端折って使うことが多いのですが、忠実に元の言葉を使うのが正しい態度です。

(10)
長い言葉を繰り返すのを避けるため、省略した表現を使うことは許されますが、それはあくまでもその場限りであることに注意します。例えば、「ワードプロセッサ(以下ワープロと云う)」といった断り書きをする、などの方法を使います。学術レポートでは、用語や記号の一覧、索引、凡例などを使って、言葉の取り決めをします。

(11)
文学的な表現では、同じ言葉を繰り返すのを避けて、別の言葉で言い換えることもしますが、論理の正確性を保つ文章では、これは誤字、当て字と同質の過ちになります。

(12)
他人が言ったり書いたりした言葉を引用するときは、注意深くあるべきです。誤った引用をするとその人の名誉を傷つけることになります。また、基本的に著作権を侵していると考えなくてはなりません(マスコミの記者が嫌われていることの一つの利用がこれです)。

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