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付録E.活字の書体と字形

Appendix E. Style of Typeface


E1. 解説

字形

 文字は、ローマ字、漢字、仮名などのように、まず大きなグループで分け、その範囲で図形的に分類します。文字の異同を言うときには、大きさの大小やデザイン的な要素ではなく、形の本質的な特徴を比較して区別します。このときに言う形が字形です。字が同じと言うときは、字形が同じであることを言います。

 漢字の場合には、同じ意味を表す文字で字形の異なるものがあります。それらを区別するとき、正字・本字・古字・略字・簡字・繁字・俗字・異体字・別体字・当て字などの用語があります。音が同じで字形さらには意味も違うものは同音異字です。中国語では漢字の読みに四声の区別がありますので、日本語よりも同音異字は少なくなります。ローマ字は表音文字ですが、言語ごとに異なる撥音を区別するためアクセント記号などを付けた拡張ラテン文字が使われます。

字体

 同じ字であっても、図形としてデザインの違いを言うときに字体または書体と言います。明朝体とかゴシック体と言うのが、図形的な特徴を表した呼び名です。字体と書体とは意味の上では明確に区別をした使い方をしていません。書体と言う言葉は、お習字で字を書くときに関係が深いので、漢字の字体を言うときに使います。楷書・草書・行書などは書体の種類です。同じ字体と言うときは、字の大小を問題にするのではなくて、図形として相似であれば同じ字体であると言います。字体はデザインに関係がありますので、著作権を伴うことがあります。

 一つの字体でも、縦横の比率を変えたり、斜に変形させたり、線の太さを変えたりすることは字形の問題ですが、眼に映る印象が異なるので、これも字体の違いとしています。ワープロでは、同じフォントからボールド体、イタリック体、幅の拡張などを組み合わせて、ソフトウェアで字体の種類を増やしています。

 図形としての文字は基本的に線で構成されますので、線の作り方で字体に特徴が出ます。漢字では、例えば「木」の字の縦棒の下をハネルかトメルかは字形の問題よりも字体の問題としています。英字では、線の端にヒゲ飾り付いた字体と無い字体とがあります。ヒゲ飾りをセリフと言います。セリフ付きか、セリフなし(sans selif)かは、欧文字体の種類をを大きく二分する分類です。

漢字と英字との混用

 和書の伝統的な書式は縦書きですが、科学技術関係の印刷物では、数式や英語の用語などが入りますので、洋書と同じように横書きが標準になってきました。それと同時に、和文に英文が交じる場合のスタイルの整合性が悩ましい問題になりました。多くの場合、和文と欧文との書体とは本質的に異なったものですので、整合性は主として寸法の選び方をどうするかになります。JISの文字コードには英字も含まれていますので、これらは漢字と同じく全角の寸法で利用できるようにもなっています。一方、日本語のワードプロセッサでは半角の英字も使えますので、英字に関していえば、全角と半角と二種類の字体が存在しています。

 全角の漢字活字は縦書きにも横書きにも利用できますので、全角の英字は縦書きに組んでも利用できます。全角の英字の書体は、和文の書体と似せて構成されていて、例えば明朝体の英字が利用できます。半角の英字は横書きでしか利用しないので、縦書きの和文の中で利用するときには、英字の行が横向きでページの中で縦に並べなくてはなりません。

 和文も横書きにすると、英字との混用に無理がなくなります。ただし、英字を全角で組むと字間が空き過ぎますので、英字は原則として半角相当の字体を使います。さらに、ワープロの印刷では、活版なみに文字幅を字形に合わせて変化させることも可能になりました。これは見た目に仕上がりがきれいになる利点もありますが、字数の計算(バイト数)を当たりたいときに不便になりますので、文字間隔が一定の字体も選択できるのが普通です。和文と欧文との混用された原稿でバイト数を当たりたいとき、全角漢字の幅に半角英字が2字分詰まるようにすることがあります。これは、漢字は2バイトコード、英字が1バイトコードであるのとの対応が簡単につくからです。

 漢字と英字とを横書きで混用するとき、見易さや見た目のきれいさを支配する要素が二つあります。一つ目は文字の高さ、二つ目は文字列の基準線の選び方です。第一の方は、英字を漢字に比べてやや小さい寸法にします。これは漢字と仮名との混用でも意識されています。第二の方では、E欧文(英小文字と漢字と、それぞれ高さの中心を一致させた配列の文字)とR欧文(英大文字と漢字と、それぞれ高さの中心を一致させた配列の文字)とがあります。しかし、英小文字の f g j q y のように基準線から下に字形が出る文字は、漢字の下側の基準線よりも下にでることがあります。


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