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4. 画像を含める印刷

4.1 同じものを複数部数作る技術


4.1.2 浮世絵はカラーの印刷物であった

 絵葉書に相当する画像として、江戸時代から明治にかけて多く発売された、浮世絵錦絵がありました。浮世絵は、お習字の半紙大、ほぼB4版の一枚物です。江戸時代は、参勤交代やお伊勢参りなど、旅行が比較的自由にできたこともあって、名所・旧跡を紹介した浮世絵が手軽なお土産になっていたようです。浮世絵は、 1867年のパリ万博が一つの契機になって、印象派の画家集団に画法の面でも大きな刺激を与えました。当時、絵画は実物が一点だけの作品でした。木版の多色刷りの技法で制作された浮世絵は、現代風に言えば、複数部数のカラー印刷の出版でしたので、世界的に見て先端的な文化でした。写真技法を使ったモノクロのグラビア印刷は、20世紀に入ってから実用になりました。見かけはカラー写真を使ったグラビア印刷は、モノクロ写真に手作業で色付けをしておいて、色分解したモノクロ原版を、複数回重ね刷りをしました。これは色付けする職人の技術が必要ですので経費が嵩みます。大正末期頃(1920)から、カラー写真が利用できるようになって、カラー版グラビア印刷専門の画報が発売されるようになりました。アメリカの写真専門のグラビア週刊誌「LIFE」は、1936年の創刊です。戦後、一時期に最盛期もありましたが、テレビなどの映像文化が現れたことなど、時代の変化に押されて、売れ行きが伸びなくなり、1972年に休刊になりました。

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