3.6 偏心と曲げを受けるリベット群

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3.6.1 片側添接および重ね継手

図12 偏心または曲げを受けるリベット
 板をつなぐ場合、重ね継手は、その箇所に大きな局部的な曲げを起こします(図12)。片側だけに添接板を持つ場合も同じ現象が起こります。局部的な曲げを避けるには、両側から等しい板厚の添接板を当てた突き合わせ継手が最善です。片側添接を使用する場合には、必ず、曲げを防ぐ補強を併用するのが普通です。曲げ部材においては、フランジ部分はウエブと直交していて曲げ変形が拘束されますので、非対称や片側添接も使われます。しかしウエブ部分の継手は原則として両側から添接板を当てます。

3.6.2 山形鋼、みぞ形鋼の取り付け部

 これらの形鋼は、それ自身の断面の重心が板の厚みの外にあります。これをガセットプレートに接続すれば、リベット群の重心と力の作用線とがずれるため、上の3.6.1項で示した曲げと同時に、力の作用方向と直交する成分のリベット荷重が生じます。リベット間隔を大きく取り、リベット本数を多くすればこの影響を小さくすることができます。山形鋼では、できるだけ二つの山形鋼を一対にして使用するのが好ましいとされます。圧縮材を構成する場合には、できるだけ四つの山形鋼を二軸対称に配置するか、組み合わせ圧縮材として全体の剛度を高め、かつ、片側の脚だけにリベットが集まらないように断面全体を計画します。

 一方、引張材では山形鋼を単独で使用することが少なくありません。この場合、偏心による山形鋼の曲げ応力に引張応力が加わって過大な応力が出る危険を持っています。これを避けるため、鋼橋の規定では、片側添接される山形鋼の自由脚の断面は、その半分を有効とすることにしています。また、リベットの使用本数も、少なくとも3本以上使用することを指示していて、曲げ応力を少なくする未然の注意を盛り込んでいます。ただし、ミゾ形鋼については特別な指示はありません。

3.6.3 引張を受けるリベット

 山形鋼の一つの脚に板を接続し、長手方向と直角方向に引張力を加えるようにしますと、反対側の脚を固定するリベットには引張力が作用します。このような構造は禁止されています。リベットの働長方向に引張力を持たせることは部分的には許されていますが、山形鋼の取り付けの場合には曲げを同時に受けますのでこのような使い方をしません。

3.6.4 曲げを受けるリベット群

 リベット群はその平面的な配置においては、できるだけその重心を部材の重心と一致させます。部材の重心線、すなわち軸線を力線が通るように部材は設計されますので、リベット群の重心がこの軸線に対して偏心していれば、曲げ分のリベット荷重が作用します。部材は必ずしも対称な断面ではありませんので、図形的な中心線と部材軸線と一致しないこともあります。この場合、リベット群の重心を部材軸に合わせるために、無理に非対称なリベット配置にすることは避けます。部材断面を構成する個々の板に対して対称なリベット配置にして、全体としての重心が部材の重心と一致するように計画します。なお、曲げ部材のウエブは、曲げとせん断とを受けますので、リベット荷重が場所によって変化します。このリベット荷重は弾性理論に基づいて計算します。説明は6.4節で行ないます。


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