リベット穴の個数は、断面ごとに、最初が1、ついで2, 3, 4, 5と増加して部材端に達し、全部で15個です。リベット荷重がすべて等しいと仮定しますと、部材力 P は15等分されて各々のリベットに作用します。断面0から6に至るまでに部材力は階段状に添接板に伝達されて減少して行きます。一方、添接板の力は階段状に増加して、断面6で全部材力が添接板に移ります。
ここで部材断面の応力を計算します。断面1ではリベット穴一個分の幅だけ純断面が減少したと考えて応力を計算します。断面2では、穴2個分の幅で純断面積が減少しますが、断面1で添接板に移ったリベット荷重分を差し引いた(14/15)P の部材力で応力を計算します。以下同様に断面のリベット穴の個数は増えますが、部材力が減っていくことが効いて、応力の増加を抑えることができます。添接板の応力は、逆の原理で増えて行きます。断面5で5穴全部を差し引いた純断面で全部材力を伝えなければなりませんが、断面が減少しても余裕のある厚みの添接板を使います。添接板を変断面とするのは、3.1節で述べた、リベット荷重の均一化を期待するものですが、実用上の信頼度はあまり期待できません。
引張部材の継手の設計においては、リベット穴の控除による純断面積を求めて応力を検証する必要がありますが、この際、2.5節で説明したように、同一断面に無いリベット穴の影響を加味します。一般に、リベットの間隔を適正に配置して置けば、ある断面で部材がミシン目を縫うように破断するのではなく、継手の耐荷力はリベット一本当たりの耐荷力×本数で決まる耐荷力とほぼ等しくなることが実験的に確かめられています。逆に言えば、この耐荷力が得られない継手は、リベット配置の設計が不適切であることを意味します。
リベットで結合された引張部材の弾性的な性質を考えたい場合、断面がリベット穴で減少しているので、伸びが大きく現れると考えますが、この影響は少ないので、全断面としての性質で計算します。これは、穴周辺で伸びが添接板で拘束されるためです。逆に穴があいてない部材よりも伸び率が低下する危険もあります。