3. リベット継手の強度(リベット群としての強度)

3.1 リベット列に対する力の分布

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図5 リベット列に作用するリベット力の分布
 リベット継手の力の作用方向に数本のリベットが一列に並んで配置されている場合、これらのリベットそれぞれが受け持つ力は実際には等しくなりません。もし、すべてのリベットが同じ力を伝達すると考えますと、板に作用している力は、リベット一本ごとに階段状に減少して相手材に伝えられ、相手材は同じくリベット一本ごとに階段状に力が増加します。しかし、板の応力によるひずみを考えますと、リベット穴の位置は相対的にズレを生じ、そのズレはすべてのリベット穴で同じではありません(図5)。

 この問題を、簡単な仮定のもとに理論的に解くことができます。その仮定とは、リベット穴のズレが、リベットに作用するせん断力に比例する、および、リベット間での板のひずみがその間の平均応力に比例する、というものです。式の形は階差式になります。寸法や弾性係数などで数値計算の値は相違しますが、傾向としては次のことが言えます。

  1. リベット荷重(リベットに作用する力)はリベット列の両端で大きく、中に向かって減少する。

  2. 厚さの異なる二枚の板(断面積が異なる)を接続するときには、厚板の終点にあるリベット荷重が最大になる。

  3. リベット荷重の不均一性は、リベット径が大きい程、板面積が小さいほど、および、リベット間隔が広いほど、大きくなる。言い換えると、弱いリベットを密に並べると均一なリベット荷重の分布になる。

  4. 厚さの等しい二枚の板を接続する場合、リベット本数が増加するとリベット荷重の不均一がひどくなる。伝達力は、殆ど端部のリベットに集中し、リベット本数を増しても伝達力に対する端部リベット荷重の大きさは殆ど変らない。このことから、一列に5〜6本以上のリベットを並べるのは有効ではない。

  5. 互いに連結される部材の断面積を、それぞれの端部に向かって縮小させた構造にすると、リベット荷重の平均化に役立つ。

 以上の理論的な根拠に従えば、最後の項目 5 を満たすような継手が最善ということになります。実際の構造ではこの状態を満足しませんので、リベット荷重は平均値の10〜25%の不均等さはあるものと考えられます。継手の静的な強度を実験した多くの例から、継手の最終強度は、リベットの配列、配置には殆ど関係がなく、リベット一本当たりのせん断強度、もしくは支圧強度にリベット本数を乗じた強度が得られています。このことは、破壊時には材料の降伏と共にリベット荷重の再配分が行なわれ、結局すべてのリベットが同一の耐荷力に達して、始めて全体の継手が破壊されるためです。

 一方、継手の疲労に関しては、応力の集中が強度に大きく影響しますので、不均等なリベット荷重が生じないような注意が必要です。すなわち、強度の大きい鋼材を弱いリベットで繋ぐと、一列当たりのリベット本数が増すことになりますが、そうすると端部のリベット荷重が大きくなって、端のリベットから各個撃破で破壊が進む危険を持っています。このことは、一列のリベット本数があまり多くならないように鋼種と板厚に見合ったリベット径を選択しなければならないことを意味します。


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