エクセルの特徴の一つは、数値計算の手順を具体的に追いかけることができることです。学術論文では、数学の理論式が書いてあっても、そのまま数値計算に使うことはできません。数値計算は、具体的な計算手順を組み立てることが必要ですので、従来から技術の課題として、別に研究されています。汎用のプログラミング言語を使った数値計算は、ソースコードのファイルが計算手順を書いた文書です。しかし、コンパイルしたオブジェクトコードのファイルは、計算手順を解読する目的には実際には殆ど使えません。ソースコードを公開しなければ、計算技術の詳細が盗用されることを防ぐことができます。しかし、ソースコートの管理を怠ると、作成者側であっても、技術の中身を検証する手立てを失い、技術移転(technology transfer)の空洞化を招きます。エクセルは、ソースコードの文書ではありませんが、計算手順を追いかけることができることが特徴です。これは、計算技術の中身を、第三者も見ることができ、かつ、実際の計算にもそのまま利用できます。このことは、エクセルを使うソフトウエアの作成が、個人単位か教育利用には良いとしても、商品化には向かないことを意味します。知的な作業に対して、相応の対価が得られるようにするためには、第三者がソフトウエアの中身を変更できないようにするか、部分的に機密化ができるような対策が必要です。これが保護と言う概念です。これには幾つかの方法があって、使い分けを理解しておくことが必要です。 |