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5. 錯覚と錯視を避ける作図技法

5.2 隠れ線と隠れ面


5.2.1 線の交差で扱う隠れ線

 立体的な(三次元)形状を平面的な(二次元)図形に描くと、次元数が下がることで正確な形状を理解できなくなるか、誤った構造を考えることが起こります。これを意図的に作成することが一つの芸術としてのだまし絵です。図学的に正確な投影法を使った図を描いても、誤って理解される例として、第2章の図2.9を示しました。見取り図、いわゆるスケッチ風の図では、遠近法(パース)を使うと、或る程度は誤解を避けることができます。これは、眼からの遠近が図の大小で判別できるからです。しかし、いつも成功するとは限りません。線描きの作図技法として、前後関係が分かるように隠れ線消去(hidden line removal)を利用することがあります。図5.1は、骨組み構造(針金細工:wire frame structure)に応用したものです。すべての骨組みの立体的な位置関係をデータとし、視点からの交差して見え、かつ向こう側にある位置の座標を求めます。その位置で、相対的に視点から遠い方の部材線を描くとき、交差個所に僅かの隙間を空けます。このような作図は、普通のCADソフトでは扱いませんので、自前で作図ソフトを工夫します。因みに、第3章 図3.3の鉄筋組み立て図は、この技法を使っていません。

図5.8 隠れ線の技法を使った骨組み構造の作図
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

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