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5. 錯覚と錯視を避ける作図技法

5.1 三面図


5.1.5 図柄の向きでデザインを考える場合

 図5.4の24通りの見取り図は、英字の向きが個別に異なりますが、対象物は一種であって、その見え方の違いを示したものです。ここで、表面の文字(A〜F)の位置と向きとを変えた、デザイン違いの数を考えてみましょう。図5.3の展開図で、平面図の位置に文字Aを置いて、残りの五面に(B,C,D,E,F)を割り付けます。割り付けの組み合わせは5!=120通りです。文字の字形は非対称ですので、4通りの向きがあります。向きの組み合わせは、4の5乗=1024通りです。結果として491520通りのデザイン種類があります。理論的には大きな数になります。実際には英字に代えて、別の図柄を考え、さらに対称性も考えることもします。色違いだけで区別すれば1の5乗=1通りしかありません。2軸対称の図柄、例えば英字では(H,I,O,X)ならば2の5乗=32通りです。サイコロでは、数の(2,3,6)を表す点の図柄が2軸対称ですので2の3乗=8通りの区別があります。さらに、サイコロでは、数(1,2,3)の面の反対側の面は(6,5,4)とする約束がありますので、面の割り付けの組み合わせは2通りしか有りません。つまり、サイコロでは、眼数の向きのデザインを考えなければ、2種類しかありません。これは、図5.5で見るように、3面が見える見取り図で、数1,2,3の眼が左回りか右回りかの区別となります(図5.6)。

眼の順は左回り

  

眼の順は右回り

図5.6 さいころ

図5.7 ミロの抽象画(多分この向きだろう?)


 矩形状の平面図形では、特に向きを考えないのですが、幾何学的には4通りの向きの区別があります。筆者はミロ(J.Miro':1893-1983)の抽象画の複製を持っています。向きが分からない絵ですので、適当に飾っています(図5.7)。これは、ミロの企みでもあるのでしょうか。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

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