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4. 製図教育の視点

4.2 常識的な習慣と規格化


4.2.3 読図に必要となる教育過程

 上の項で云う技術移転は、教育過程に必要です。経験を積んだ集団内では常識となっていて、表だって文書になっていない知識を、初心者は知らないことが多く、どこかでそれらを埋めておく必要があります。それがどの場面で必要であるかは予測できませんので、系統立てた教育過程を考えます。この場は、従来は、専門ごとに分科された工業高校や工業専門学校で扱っていました。大学・大学院などの上級教育を指向することが多くなったので、紙の上だけの受験技術に重点を移した教養教育が普通になりました。一方、大学では、学問研究の方に視点を置く傾向があって、実務に絡む教育過程の環境が抜けるようになってしまいました。製図で言えば、実際に手描きの作図をしないで、コンピュータを利用する間接的な作図に移りました。しかし、それも、教科に組み込まれることも少なくなりました。そうすると、既に作図された図を理解する知識をどこかで埋める必要があります。しかし、作図の細かなミスや、作図者の微妙な工夫までを図面から読み取る経験的視点が抜けます。図面検査の場面では、口うるさい先輩技術者が居ることが少なくなりました。この検査は、作図の当事者から見れば、重箱の隅をほじくるような些細なことで文句をつけるいじめになる危険もありますが、合理的な説明を心がけることで相互の納得が得られます。その幾つかの例を次節から解説します。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

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