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3. 寸法と尺度

3.5 材料と寸法情報


3.5.1 鋼とコンクリートとが二大工業材料である

 18世紀後半から始まった産業革命で、大量の鋼材が安価に供給されるようになりましたので、巨大な構造物の建設競争が始まりました。それ以前、構造物に使う材料の殆どは、木材と石材でした。15世紀中ごろから17世紀中ごろまでの大航海時代、大型の帆船の製作に、大量の木材資源が消費されました。特にレバノン杉は、帆船のマストの材料に適していましたので、無制限に伐採され、今では輸送に不便な個所に残るのみとなり、それも世界遺産として保護の対象になってしまいました。人類の歴史から見ると、ノアの箱船、トロイの木馬の伝説があることは、豊富な森林資源があったことを示唆しています。中国北京の天安門、奈良の東大寺などは巨大な木材を贅沢に使った構造物です。良質の木材の成長には長い年月が掛かります。世界的に見れば、自然林があった地域が伐採によって消滅し、砂漠化した所もあります。イギリスのロンドン大火は1666年ですが、その当時の建築が殆ど木造であったからでした。大量の木材の供給が既に不便になっていたことと、防火のため、その後の建造物は石材が主体になったのでした。ヨーロッパ諸国は石造の文化と誤解している面がありますが、実は、木材資源の殆どを使い果たしていたのです。現在利用されているコンクリートに使われているポルトランドセメントの発明は19世紀の半ばです。それ以降は、自然の石材に代わるコンクリート構造物の建設はすさまじいものがあります。大きな構造物は、鋼とコンクリートとを主な材料と考えがちですが、自然の岩石や砂利・砂、人工的な石材としての煉瓦、さらに土も重要な構成材料であることを見落としがちです。これらは、全体の体積または重量が建設工事費の積算に使いますので、この計算に必要な寸法情報を設計図面に書く必要があります。立体的な対象物では、表面積の計算も重要です。これはペンキを塗る面積を積算するときに必要です。長大橋梁になると、専属の塗装工が端から作業をして一通りの塗装が済むまで何年もかかりますので、結果として一年中作業を継続することになります。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

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