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3. 寸法と尺度

3.3 実寸法と呼び寸法


3.3.4 閾値と言う概念もある

 図面に寸法が表示されていても、寸法数値には、物理的に言えば、0.05%の曖昧さを含みます。そのことを一つの常識として実用的に言う数値を呼び数と言います。数学的に言うと、数の丸め処理をするとき、最小桁数値は、幅にして±0.5の曖昧さが入ります。これは、精度と言うよりは、閾値(しきい値:threshold)の概念が当たります。どちらも工業的な妥協の手段に使いますので、理論にこだわる人は使いたがりません。材料の寸法を言うとき、製造規格の基がインチ系列であるものをmm単位で表記することがあります。例えば、ボルト経の寸法では、呼び寸法として19, 22, 25 mmなどと記入しますが、これは 3/4, 7/8, 1インチが基になっています。しかも、実際寸法では、製造時の許容精度を含んでいます。ボルト経の系列には、英米のインチ単位に基づくものと、メートル単位とが混用されていることがあって、混乱が長い間続きました。材料寸法を検査するとき、呼び寸法との差があると、材料をごまかしている、と誤解することもあります。つまり、寸法表示は、設計図と製作図とでは、物理的に正確な長さと異なる解釈や表示方法を使うことがあります。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

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