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3. 寸法と尺度

3.2 寸法単位利用の変遷


3.2.1 尺貫法からメートル法への移行

 日本の度量衡単位系は、中国での単位系の影響を受けた、独自の尺貫法が使われていました。国際標準のメートル法への加盟は明治18年(1885)年と古いのですが、その教育と普及に30年掛け、1921年にメートル法が法律で制定されました。しかし、尺貫法は日常生活と直接関係していましたので、1959年に尺貫法が法律上廃止され、1966年に尺貫法を使うと罰則を伴うようになって、漸く一般生活にも普及した経緯がありました。土地の面積を測る単位用語に、(つぼ)を使わなくなりました。しかし、尺も坪も日常用語として広く利用することまで制限するのは行き過ぎです。例えば、地価の表し方を言うとき(3.3平方メートル当たり)の注釈付き表現が見られます。長さの1丁(町)=60間が約100m、面積の1町歩が1丁×1丁≒1ヘクタールに相当しますので、長い長さや、広い面積を換算するときは、あまり混乱しません。街(町)を区切る道路間隔は1丁ですので、例えば、銀座8丁のブロック距離は、約800mです。単位の呼称としての坪は、住居程度の狭い広さを言うときに便利す。それは、1間×1間(6尺×6尺)の面積であって、畳2枚分の広さを言うからです。したがって、広い面積を言うときの単位に使うと大きな数値になりますので、感覚的な理解ができません。

(補遺:筆者が教育環境に居たとき、材料学の定期試験の中に「8畳の広さは何坪か?」の常識問題を入れました。これが正答(4坪)でないときは、他の問題で合格点になっていても、単位は不合格にしました。授業は2年生ですが、3年生の再試験では殆どが正答します。しかし、中には4年生でもダメ、卒業前になって、必修単位が足りなくなって泣きついてくることがあります。この学生は、授業には出てきませんし、クラス友達との付き合いが無いのが特徴です。この問題は、一度聞けば納得する常識に属することですが、その常識を埋める通過儀礼を済ます機会が無かったのでした。)
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

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