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3. 寸法と尺度

3.1 長さの計測と規格化


3.1.5 用紙寸法系列の規格化

 図面は紙に描きます。紙の寸法は、紙を漉くときの最大寸法(全紙)を元にして、目的に合わせて種々の大きさに裁断した切り紙にします。日本の場合、お習字に使う半紙は、全紙の半分からそう言い、JISのB4版に当たります。用紙に限らず、寸法系列が多様に選択できるのは便利な面もあるのですが、管理の立場から言うと、少ない寸法系列に揃えることが理想です。現実には、それぞれの分野ごとに習慣と歴史を背負っていますので、統一規格の制定やその利用には痛みを伴うことがあり、問題も多く発生します。用紙寸法で言うと、JISには、A列とB列の二種類があります。しかし、JISのB列は、美濃紙の寸法を反映するように決めた日本独自の寸法系列であって、国際規格ISOのB列と整合していません。A0の用紙寸法は、面積が1平方メートル、縦横寸法比が1:√2です。ISOのB0用紙寸法は面積が√2平方メートルです。これに対してJISのB0用紙寸法は面積が1.5平方メートルであって、長さにして約3%大きいのです。種々の寸法系列を規格化しておきたいのは人情でしょうが、そうすると、どんな寸法でも良いことになります。それでは規格の意義が失われます。規格は提案であって、法律のような遵守義務はありませんので、単位用語に注意すれば、必ずしも規格を遵守しなくても許されています。したがって、多少不便なように見えても、規格は、種類の数を制限する方針を採用します。日本の官公庁の文書は、1997以降、B列を止めて、A列を採用するようになりました。これは、文房具だけでなく、書棚、キャビネット、家具調度の寸法にまで影響が及ぶ一種の革命です。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

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