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3. 寸法と尺度

3.1 長さの計測と規格化


3.1.3 長い距離は歩測で測る

 現代は自動車や鉄道の利用が便利になりましたので、歩いて距離を実感する機会が少なくなりました。歩幅は個人差がありますが、歩測で測る距離は、案外正確です。専門教育の測量学の実習をさせるとき、最初に100 mの距離を区切っておいて、歩いて距離感を体験させます。それから、歩測で距離を測って小範囲の地図を描かせると、非常に正確な作図が得られることを実感してくれます。また、目測でも距離感を間違えないようになります。精度は落ちますが、歩いた時間でも距離が分かります。平均して1分で100mです。したがって、一時間歩く距離は、約6kmです。前の項で説明した1マイルは約2000歩の距離です。健康維持のため、一日一万歩を歩くのが良いと言われています。これは距離にして約5マイル=8km=2里、時間にして約1時間半弱の歩きです。ウオーキングクラブなどでは、コース設定の距離に、このことを踏まえています。万歩計に頼らなくても、運動量の見当がつきます。長さは、このように体感できますが、重さの方は、簡単に理解できなくて、知識で覚えなければなりません。設計作業は、寸法の提案と共に、材料の重量を積算して費用を計算します。このとき、人が重さを体感できるのは、せいぜい100 kgまでだからです。蒸気機関車D51の設計重量が130 tであると言われても、実感が湧きません。このこともあって、構造物の設計では、重さの見積もりを間違えるミスが、かなりの頻度で起こります。設計の検査では図面の長さの確認と体積積算と重量積算が重点検査の項目です。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

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