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3. 寸法と尺度

3.1 長さの計測と規格化


3.1.1 地図の作成は先ず測量から始める

 人類が文化らしいものを持つようになった歴史は、幾何学的な知識を生活環境応用するようになったことに、一つの起源を置くようです。古代遺跡の調査をして、幾何学的に整然と並んだ遺構や遺物が発見されれば、そこに文化があったと想像します。幾何学的に設計された都市計画、それを台にした建物や構造物の計画は、最初に幾何学的な区画の設計図を考えて、それを元に、何も手掛かりのない土地に、人工的な目印を作ることから始めます。これは、地面の上に大寸法の製図と製作の作業をすることと考えることができます。この準備作業には、何がしかの座標系を考えます。その座標軸の一つは、正確な南北方向です。これを決めることは天文学の知識の応用です。その決定過程には宗教的な儀式を踏まえるのが普通です。地球の形状とその上に座標系を設定することの学問は、測地学(geodesy)です。近代的な測量学は、測地学を踏まえます。世界地図を見ると、北米とアフリカ大陸では、州や国の国境を緯度・経度の線に合わせて幾何学的に決めているのを見ます。これは地形の特徴が少ない場所に目印を作る必要があるため、測地学の知識を元に、土木技術者が引いた人工的な境界です。その位置の緯度は比較的簡単に測定できますが、経度を正確に知ることは大変です。日本の地形は、山や川の自然を境界に利用しています。直角を利用した幾何学的な形状を都市計画に応用することは、奈良と京都では中国から、札幌市は欧米から学びました。函館の五稜郭も、近世の幾何を学んで応用した形状です。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

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