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2. 作図と製図

2.7 投影図と透視図の区別


2.7.4 絵画に見る平行投影と中心投影

図 2.7 ゴッホが遠近法枠を使って製作したと想像して描いた図(三浦 篤)
 対象物に太陽光のような平行光線を当てる(投光する)と、光源と反対側に面(投影面)が在れば、輪郭のはっきりした(shadow)ができます。この輪郭の作図に、幾何学の原理を応用します。実を言うと、光を通さない対象物では、原理的にはシルエット(silhouette;フランス語)、つまり外形の輪郭図です。そこで、光源側に視点が在って、対象物を人の眼で見たような図形に作図します。透視図は、面を通して向こう側が透けて見える透視投影面を考え、その面の向こう側に在る対象物をその面上で見た形状を図に作成したものを言います。絵画の方では、この作図技法を遠近法と言います。この図形は、作図原理的には中心投影です。日本語で透視図中心投影図遠近法に当たる三つの用語は、英語では、perspective一つです。日本では、省略したカタカナ語のパースも好んで使われます。手書きで対象物の形状を作図するのは技法的に難しいので、西洋の近代絵画では、正確な形状を作図するために、簡単な透視用の道具を使っていました(図2.7)。日本では大和絵と言う画法で描いた絵画があります。これは、作図原理で言えば、平行投影の一種である斜投影を使っていて、視点からの遠近に関わらず、幾何学的に平行な図形は平行線で描きます(図2.8)。


図 2.8 郵便切手に採用された (b)士女遊楽図屏風・囲碁
(斜投影で描かれた典型的な大和絵)


科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

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