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2. 作図と製図

2.7 投影図と透視図の区別


2.7.3 誤解が起きないのは第三角法

 ISOが提案する工業製図の国際規格は、合理的な面があると同時に、各国ごとに事情があって、必ずしも国際的な合意が成立しているのではありません。その代表的な例が投影法です。ヨーロッパ諸国は、モンジュの始めた画法幾何学の理論を元にした第一角法を採用しています。一方、アメリカと日本は第三角法を規格に採用しています。ISOとしては、どちらかを推奨したいところですが、会議では合意に至らず、両方の規格を認め、どちらを利用するかは、各国ごとに裁量に任せることになりました。実践的な作図法としては、第三角法の図の配置が分かり易いでしょう。その理由は、対象物を紙細工で作成したとして、その展開図を作成すると考えたとき、個別の投影図が同じ位置関係になるからです(図2.6参照)。第一角法の欠点の代表的なものは、側面図の配置にあります。左から見た側面図を正面図の右に置きます。左右の幅の大きな対象物では、左の側面図が、遠い反対側の、正面図の右に置く約束だからです。上から見た平面図と正面図との位置関係も、第一角法と第三角法とでは配置の約束が上下逆です。こちらは、第三角法の場合であっても、例えば橋梁設計の一般図などでは、正面図を製図用紙の上に配置することが実用されています。このような、規則から外れる図の配置があるときは、図に正面図や平面図のような言葉で見出しを使うか、記号と見る方向の矢印記号を付ける、などの方法で、図の読み違えを防ぐようにします。第一角法のもう一つの欠点として指摘されることは、投影図が視点から見て対象物の向こう側に置く原理を使いますので、物理的には図が隠される作図モデルになっていることです。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

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