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2. 作図と製図

2.5 幾何モデリング


2.5.3 作図用のソフトウエアが必要であること

 幾何モデルのデータを準備することは、正直に取り組むと、かなり手の掛かる作業です。それは、頭の中でモデルの全体構造を想像しておいて、具体的な数値計算で寸法や座標の計算をしなければならないからです。これを賢く実行することのプログラミングが種々工夫されています。幾何モデリングと似た処理が必要になる構造解析に有限要素法(FEM:finite element method)があります。解析対象とする、既に作成済みの幾何モデルを、メッシュ(網目構造)に分割する前処理が必要です。これには、半自動的にメッシュを作成する方法が研究されています。幾何モデリングの場合には、単純な幾つかの幾何モデルを、擬似的に変形・切断・穴あけ・溶接などの加工(processing)をして、複雑な形状に合成する方法をプログラミングします。これには、コンピュータに話しかけて実行してもらうユーザインタフェースが工夫されています。線図形を描くだけのソフトウエアの基本的な処理は、ペンの種類を決めて、二点を結ぶ線を引くことです。プロッタは、コンピュータ側から見れば外部装置ですので、装置の準備と終了を含めて、全体としては10個未満のサブルーチンがあれば役に立ちます。これを応用して便利サブルーチン、例えば、円弧を描く、実線の他に点線や破線を使えるようにする、などが追加され、この全体をグラフィックス言語としてまとめます。用語としてはAPI(application programming interface)とも言います。このプログラミング技法は、プロッタを装置(デバイス)、作図する線や単純な図形をオブジェクト(物)とみなして、オブジェクト指向プログラミング(object-oriented programming)と総称するようになりました。オブジェクトの、特徴に当たる性質をプロパティ(ptoprtyy:属性)と言います。直線を引く、などの動作を表す動詞の意義をメソッド(method)と言うようになりました。これは、従来のプログラミングではサブルーチン(subroutine)に当たります。メソッド、オブジェクト、そのプロパティを表す全体の言語表現が、グラフィックス言語です。これらの知識は、プログラマレベルで必要です。一般ユーザは、商品としての、CADのソフトウエアの使い方(ユーザインタフェース)に知識があれば充分です。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

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