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2. 作図と製図

2.3 投影原理と作図データ


2.3.3 投影法を適切に使い分けること

 立体的な形状を平面的な図に表すときの幾何学的原理を投影 (projection)と言い、それを応用して、人が見て理解できる図に作成したものが投影図です。幾何学的には、三次元図形から二次元図形への変換ですので、次元数が下がり、実際図形では奥行き情報が失われます。単純に丸や四角を描いてあると、そこが飛び出した柱状態であるのか、凹んだ穴であるかの区別ができなくて、場合によってはだまし絵になります。それを補う実践的な方法は、複数の向きから見た投影図をセットにして表すことと、寸法を記入して大きさを示し、また言葉を添えることもします。或る一つの方向から見たように図に描くときの、幾何学的な技法の学問を画法幾何学(または図法幾何学:descriptive geometry)と言い、モンジュが始めたとされています。この原理は、対象物に太陽光線のような平行光線を当て、対象物の後ろに在る投影面に写る(shadow)を台にして、光の側から見た図形に作図する方法です。画法幾何学では平行投影(parallel projection)と言います。人の眼(片目)で見たように描くときの図を透視図(パース:perspective)と言います。作図の幾何学的原理は、平行光線ではなく、点光源を考えますので、中心投影(central projection)と言います。対象物の後ろに在る投影面上の影を考えることもできますが、分かり易いモデルは、向こうが透けて見える透視投影面を通して、そこに写る図形を台にして作図します(図2.7参照)。平行投影は、点光源を無限に遠い位置に移動させると平行光線になる原理ですので、中心投影の特別な場合と考えることができます。投影図単体の図形の性質は、対象物投影面光源の三つの要素の、相対的な位置に関係します。もう一つ、人が投影図を見るときの位置関係があって、正面に置いた用紙上のどちら向きに図を置くかの選び方も関係し、場合によって錯視が起こります(図2.9参照)。これらを正確に表したいときには座標系の定義を使う必要があるのですが、モンジュの時代にはこの考え方が未熟でした。これが投影法の理解を難しいものにしていた理由の一つです。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

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