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2. 作図と製図

2.3 投影原理と作図データ


2.3.1 製図は実物ではなく幾何モデルを描く

 形状を幾何学的に正確に表す基本図形は、定規を使って直線を組み合わせて描く多角形と、コンパスを使う円だけです。任意の曲線、例えば単純な放物線であっても、多角形で近似させて描きます。手書きの場合は、曲線定規撓い定規(しない:スプライン:spline)を使い、作図者の技能で滑らかな曲線を描きます。コンピュータ制御で曲線を描かせるときは、多角形で近似させます。製図で描く図形は、完成させたい実物をそっくり写したように描くのではありません。描く対象は、実物を想定しておいて、それを或る尺度で縮小または拡大した幾何モデル(geometric model)です。したがって、図面そのものを再度拡大または縮小して利用すると、尺度の意義が失われますので注意が必要です。地図を台にして構造物の平面図を描くことを考えれば分かるように、元の図の原寸が分かるように、図面の枠に寸法目盛を記入することが製図基準には決められています。幾何モデルは、これから作る実物の形状と寸法を、すべて正確に相似させるようにはしません。省略・簡略・誇張の技法も使います。これらを補うために寸法を記入します。言葉で説明するのも親切です。ただし、英語を使うのは国際的に使う図面では大切ですが、日本語の環境では、英語を知らない職人さんにも理解できるように、それに代わる、約束を決めた記号を使うようにします。製図では、文字も記号扱いです。実物を製作するときは、設計図を基に、改めて原形に忠実な詳細図製作図に描き直すこともします。設計図までの図は、計画段階または管理段階で主に利用します。工場で使う製作図、さらには輸送・組立て、構造物の場合には建設など、専門的な場面で多くの図が作図されることも理解しておく必要があります。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

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