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2. 作図と製図

2.1 図を描く技術


2.1.1 技術としての三要素を考える

 工業製図は技術です。技術には、三つの要素があります。道具・技法・技能です。現代風に言えば、ハードウエアソフトウエアユーザインタフェースです。図書(としょ)とは、現在では書物の形体を主に指します。古くはズショと読み、図(絵画)と書とを区別しました。絵画は、書物よりも大きな寸法になるからです。工業製図は、製作したい対象物の形状と寸法とを正確に伝える必要がありますので、幾何の原理を応用して描き、対象物の製作も幾何学的な制御を応用した道具や装置を使います。製図は、製図用具を使うことから、手で描く自在画(free drawing)と区別して用器画(mechanical drawing,instrumental drawing)とも言います。便利な製図用具が使えると言っても、手を使って図を描く人の技能の上手下手が関係します。道具にコンピュータを応用したCADのソフトウエアが使えるようになりました。誰でも簡単に、綺麗な設計図が描けると誤解する人もいます。専門ごとの知識と製図の約束(技法)を踏まえ、また、全体図面を良い体裁にまとめるためには、基礎的な学習と、実践経験の蓄積を積まなければなりません。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

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