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1. 土木製図基準制定と改訂の経緯

1.3 日本語の問題


1.3.3 法律で制限される条項がある

 規格は法律ではないので、守らなければ罰則を伴うようにすることは、別に法律で定めます。代表的なものに計量法があります。この前身は度量衡法であって、日本旧来の尺貫法に代わってメートル法の採用が義務付けられました。したがって、製図では、メートル法を採用します。しかし、英米ではフィート・ポンド単位が日常的に使われていて、メートル法の採用を国家規格として推進していません。そうすると、元の長さの単位がインチやフィートである対象物の図面を、日本で利用するとき、また、その逆の対応も考えなければなりません。日本の単位である尺や寸を使うことは法律違反ですが、インチやフィートを使うのは法律には違反しません。そこで、メートル単位に換算した寸法を主な表示として使用し、フィート単位を参考として添えることで妥協を図ります。図面を含め、科学技術に関する日本語の文書をまとめるときに混乱することは、数値そのものと単位名とが、相互に関連することです。メートル表記以外、日本語の環境では単位名の表記方法は多様です。話し言葉では、一つ二つと言いますが、少し改まるときはを使います。物に合わせた単位名、例えば、紙は、書籍は、車は、テレビ画面寸法の 16、コップの水一などと言い分けるのが素養とされます。面積を表す単位のは、尺貫法に基づくとして表記を避ける傾向がありますが、全く使わないのも滑稽なことがあります。日常用語に出てくる数値と単位名とは、呼び数です。縮尺寸法の用語に尺と寸とが使われていますので、カタカナ語でスケール、サイズと言い替えるのも見ます。しかし、日本語を正確に使うと言う、保守的な態度から見れば、日本語を乱します。筆者の原稿では、カタカナ語はできるだけ元のスペルを併記するようにしています。漢字は、歴史的に見れば中国からの外来語ですが、いまでは日本語の重要な構成要素だからです。このような日常用語に出てくる漢字の単位名を覚えることは、外国人を悩ますようですが、a cup of waterのような物質名詞の言い方であると割り切って覚えるようです。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

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