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1. 土木製図基準制定と改訂の経緯

1.2 標準化の基本的な考え方


1.2.6  CADが普及したことによる影響

 土木・建築・船舶など、大きな対象物の製図方法は、相対的に寸法の小さな機械部品製図方法の習慣とは異なる点が幾つかあります。これが図面の管理では論争になっていて、国家全体として規格の一本化の妨げになっていました。主な論争点は二つあって、一つは、 1.2.2項で説明した投影法、もう一つが寸法線と寸法数字の記入法の習慣です(後の第3章、図3.2参照)。旧来の製図通則と、それを受けた機械製図関係での寸法数値の記入方法は、寸法線の途中を切断し、寸法文字の高さの中央を寸法線の位置に揃えます。手書きで製図をする場合には、この製図方法は寸法数値を際立たせて見栄えを良くします。しかし、長い寸法を表示しなければならないときは、全長が辿れるような長い連続した寸法線を描く場合と、長さの途中を省いて詰める描き方もします。寸法線の途中を切ることは、寸法が実際の図面上の長さと比例しないときの、表し方の一つです。そのことを考えて、寸法文字並びを寸法線の上に書き、寸法線を連続した長い下線(アンダーライン)になるように描きます。コンピュータ制御の自動製図(CADの用語が一般化するまではこのように言いました)を利用するとき、旧製図通則を再現するような寸法記入のプログラミングは複雑になります。それは、文字並びの横幅を計算し、その幅分だけ線を引かないようにし、また文字の記入位置を文字高さの中央になるように制御しなければならないからです。このことを考慮して、ISOも、寸法線が寸法文字並びの下線扱いにすることが合意され、JISもそれを取り入れることになりました。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

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