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1. 土木製図基準制定と改訂の経緯

1.2 標準化の基本的な考え方


1.2.4 建前としての規格と独自性の主張

 規格を決めるときは、理論的な裏付けを元に、合理化した理想が提案されます。しかし、必ずしも実践的な条件をすべて含むとは限りません。その典型的な例は、尺度(縮尺・現尺・倍尺)の選択に見られます。理想を言うと、1:Nで表す分母Nは、 1,2,5(×10N)とするのですが、実際には用紙寸法に投影図が適度に納まるように、Nとして30, 40, 60なども使います。英米の図面では、1フィートが12インチであることから、12の倍数も見られます。日本では、尺貫法の1間が6尺であることを受けて、3の倍数を尺度に使う頻度が多く見られます。製図が手書き主体であった時代は、尺度に合わせた寸法定規を必要としました。尺度の規定は、製図用具に使う物差しの製品種類に影響が及びます。そのため、製図基準の中に、尺度用物差しの製品化に配慮して、30, 40, 60のような数値を含ませることが必要でした。これらの要求を満たすように気配りをすると、尺度の数値の種類が増えます。そうすると、規格として、必要最小限の種類に抑えると言う建前から外れます。したがって、専門ごとの実情を考えた独自の数を使うことを禁止することまではしません。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

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