製図の約束は、専門ごとに固有の方式や習慣がありますので、すべてを網羅するように一つの規格を提案することは不可能です。そのため、全体についての趣旨と概要がJIS Z8310製図総則にまとめられ、専門ごとに、例えば土木製図通則・建築製図通則などがあり、さらに多くの個別の項目、例えば、尺度、文字、線など、があります(表1.1)。しかし、実務では、規格化されていない習慣的な規則も必要です。これらを集めて総合化すると、参考書としては見通しの悪い文書の集合になります。実用的には、規則の条文だけをまとめたものと、別冊として、マニュアル・手引き・ハンドブック・参考書・教科書などが必要です。出版物としての土木製図基準は、その全部を意識したものです。通常、規格は、法律文書と同じように、条文だけが意義を持ちます。それでは理解が難しいので、土木製図基準は、解説を加え、例図を添付し、また、目次と索引とを付けて、参考書、また、教科書としての利用ができる、欲張った編集です。官公庁などが計画する土木構造物の設計仕様書をまとめるときは、この土木製図基準の条文を利用することを謳えば、間接的ながら、JIS規格を遵守することになる、と解釈させています。
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