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22. 数値解析とグラフ化

22.3 元データの恣意的な補正


22.3.5 計測器のクセも現れること

 測定器の製作メーカーは、国が決めた規則に沿って、測定値の精度について較正(校正とも言います)した製品を出荷しています。ユーザ側は、正しい使い方をすれば精度について特に注意する必要もないと考えるのですが、何がしかの微妙な乱れが見つかる場合もあります。測定対象側に原因がある場合の他に、測定器システム全体に原因が有る場合もあります。電子回路では、S/N比(信号対雑音比)とドリフトが代表的な乱れです。例えば、抵抗線ひずみ計原理の加速度計を使う場合、測定開始前に振動分だけの出力になるように0バランスを取ります。しかし、測定開始前に0バランスを取り忘れたりすることもありますし、また、取ったとしても、僅かの微動分が残るのが普通です。したがって、デジタル化した測定データを補正する処理と原理を弁えておく必要があります。加速度データから速度と変位を計算する数値積分をしてみると、予想したような波形が得られないことも起こります。感度特性が正負側で不揃いになる例もあります。これは、順序グラフが、点対称の性質からずれていることで発見します。簡易な騒音計はデシベル表示ですが、最初から負側のデータを表示しない片側波形です。正負に同じ確率で振れる両側波形データと、負側を省いた片側波形データとを、同じ様にフーリエ解析をすると、相似のスペクトルにはなりません。フーリエ解析は、図形の特徴を取り出すことが目的であって、周期性を求める道具と即断すると誤った解釈になります。例えば、幅の狭いパルス状の波形は「位相の揃った・同じレベルの・無限に多くの周期成分」が得られます。一方、理想的なランダム波は白色雑音とも言いますが、こちらは「位相の揃わない・同じレベルの・無限に多くの周期成分」が得られます。つまり元波形は全く違いますがスペクトルは同じです。
2009.10 橋梁&都市PROJECT

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