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22. 数値解析とグラフ化

22.1 離散的に扱う時系列データ


22.1.3 最初から離散的なモデルもあること

 ランダムな事象として、しばしば、サイコロを振ったときの目の出方を例として説明します。この事象を時系列モデルとして扱うとき、サイコロを振る時間間隔を捨象して、目数の集合を、等しい時間間隔の並びと考えることもできます。目数の出方には規則性がありません(ランダムである)ので、データの並び順はどうでもよくて、試行の回数またはサンプル数の方が重要です。一方、自然災害をもたらす大地震や台風は、個別に大きさの違う記録が時間軸上に(歴史事象として)並びます。これも時系列のデータですが、最初から離散値の並びです。データ整理の一つの方法は、或る長期間Tのデータを大きさPの昇順に等間隔に並べ直し、グラフに描きます。これを順序グラフと呼ぶことにします。データ数値の小さい側、順序グラフの低位側は、適当に端折ります。数値の大きな事象だけを扱うことになりますので、このような取り組み方を極値解析と言い、気象データの解析に見られます。順序グラフから、或る大きさP以上の事象が期間Tに何回起きたかの回数Nを数え、T/Nをその事象Pの再現周期、または再現期間(return period)と言います。サイコロの、或る目の再現周期は6回です。「30年に一度くるような大地震のマグニチュード」のような言い方の30年がそうです。解析に使うデータ数は観測記録から得ますので、仮に観測データが、50年分しかなければ、「100年に一度くるような大地震のマグニチュード」は、推計で求めます。こちらを再現期待値と言います。これを求める計算理論は、既に求まっている順序グラフの統計的な性質を解析して順序グラフを外延します。この計算は推論ですので、極値観測データが増えるごとに修正します。
2009.10 橋梁&都市PROJECT

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