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21. 代数学的図形の計量と作図

21.4 時系列データの変換


21.4.8 作図の尺度の選択も重要であること

図21.6 衝撃振動波形の解析例
 振動測定のデータを、加速度計を使って時系列データを得る場合、単純にパワースペクトルを計算すると、振動数の高い側のエネルギーレベルを拡大する結果が得られ、相対的に低い振動数にある卓越振動数が埋もれてしまうことも起こります。したがって、誤解を避けるため、計算されたパワースペクトルを振動数の二乗で除して、運動エネルギーを表す性質のパワースペクトル関数に変換します。もう一つ重要なことは、グラフ化するときの座標軸の尺度です。横軸を振動数、縦軸をパワースペクトル密度に取るとして、線形尺度(linear)と対数尺度(logarithmic)の選び方で4種類のグラフ表示方法があります。図21.6の上三つのグラフは、鉄筋コンクリートビルの床に重錘を落下させた衝撃振動試験の加速度・速度・変位のグラフです。この速度波形からパワースペクトルの計算をしたのが下の二つでです。上は両方の軸を線形尺度で表したもの、下は両方を対数尺度で描いたものです。線形尺度のグラフは、二つある卓越振動が明瞭です。しかし、どこに中心振動数があるかを確定的に言うことができません。対数尺の方は、低い振動数がもう一つあることを表していて、全体としてなだらかな山が4ほどあると判定することができます。この不確定さが、確率的な性質であって、理論的に言う減衰率に因る性質です。
2009.9 橋梁&都市PROJECT

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