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21. 代数学的図形の計量と作図

21.4 時系列データの変換


21.4.4 計算幾何学としての視点

 フーリエ解析は、関数として扱う時系列と三角関数との相関を計算します。三角関数は、元はと言えば直角三角形の辺の比ですので、三角関数を計算することは大きな労力がかかる問題でした。コンピュータが利用できなかった時代、測量計算には分厚い三角関数表を参照しました。数表の値は、飛び飛びの角度で計算してありますので、中間角度での値を求めるための内挿計算の技法も必要でした。コンピュータを利用するようになって、三角関数は組み込み関数として簡単に利用できるようになりました。数値計算のステップ数を抑え、精度を上げるための数値計算術に多くの研究があります。コンピュータの演算速度は、手計算に較べれば圧倒的に高速です。とは言え、初期のコンピュータは演算速度が遅かったこともあって、フーリエ解析に応用して何千回も三角関数を参照すると、全体の演算時間をかなり長く取ります。結果として実用計算としてフーリエ解析を手軽に利用できませんでした。つまり、フーリエ解析は、その当時、計算幾何学の問題であったのです。コンピュータの機能を巧みに利用した計算方法は、CooleyとTukeyが1965年に発表した高速フーリエ変換FFT(Fast Fourier Transform)です。高速さは、30年かかる計算が3分で済む、と比喩的に説明してあるのを見たことがあります。
2009.9 橋梁&都市PROJECT

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