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21. 代数学的図形の計量と作図

21.4 時系列データの変換


21.4.3 元に戻せる変換と戻せない変換

 幾何学的な図形の投影変換は、図形が部分的に隠される場合もあって、変換後の図形を使って元の図形に戻せない場合が起こります。立体図形から平面図形への投影は、奥行き情報が失われます。変換を代数学的に扱うときは、変換と逆変換との対にこだわります。これは、或る変換を施した代数式から、元に戻す変換を保証することです。上の項で説明したスペクトルは、係数の数がn/2に減りますので、スペクトルのデータから元の波形を再現することができません。時系列のスペクトルを計算する別の方法として、時系列の数列から自己相関関数(auto correlation function)を計算し、これをcosine変換してパワースペクトルエネルギースペクトル)を求める方法があります。理論の上からは、自己相関関数とパワースペクトルとは相互に変換ができる関係にあります。有限個数nの時系列データから、実践的に(数値計算で)にスペクトル解析をするときは、離散的な(discrete)フーリエ解析を利用します。このときは、n個の事象が無限に繰り返して現れるとし、たまたまn個の区間を取り出したと仮定します。実際の振動現象、例えば図21.3の波形データの場合、適当な時間区間を解析の対象に切り出します。このときの仮定がもう一つあって、切り出し区間を変えても、全体の振動の性質が確率的(stochastic)に同じ性質が保存されているとします。これを定常な(stationary)時系列と言います。このような性質を持つ時系列が、確率過程(stochastic process)です。英語の(probability)を使わないことに留意します。
2009.9 橋梁&都市PROJECT

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