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21. 代数学的図形の計量と作図

21.4 時系列データの変換


21.4.2 時系列を表す一意の関数は無いこと

 時系列は、代数学的にはy=f(x)の一価関数形で表します。扱い易い一つの高次式で表すことはできません。一続きの時系列のデータ数列がn個あるとき、理屈の上ではn次式の当てはめが提案できるのですが、実用になるのはn=3までです。そこで、互いに独立な性質を持つ、扱い易いn個の代数式(関数列)を準備しておいて、元の時系列をn個の代数式の和(一次形式または線形形式)に直して(変換して)、その相対的な大きさがどの程度あるかを見て、元の処理の性質を理解する手立てにします。この変換は、画像の変換とは異なるのですが、像の変換となぞらえて写像と言います。写には作図の意が込められているのですが、必ずしも図に描くことを意味しません。時系列データに含まれる性質を理解したいとき、グラフに描くことと共に、最も普通のデータ整理は、平均値(定数項)、最大・最小値RMS(二乗平均値の平方根:root mean square)、ドリフトまたはトレンドと通称する長期変動、などを求めます。時間的な変動を考える必要がない数の集合は、ヒストグラムのような確率統計の処理にまとめることも行われます。元の事象は、n種類の情報を持っていると考えると、僅かの数値を引き出しただけです。周期現象の方に注目するのがフーリエ解析です。この解析をすると、n個の係数が得られます。これを数列に並べると、見かけ上、別の関数に変換(写像)されたと見ます。同じ周期の正弦(sin)、余弦(cosine)成分を合成した値をグラフにしたものがスペクトル図です。この処理を施すと、上で解説した1対1の写像原理から外れ、係数の数がn/2に減ります。
2009.9 橋梁&都市PROJECT

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