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21. 代数学的図形の計量と作図

21.1 感覚で理解する長さ


21.1.1 現実世界と向き合うこと

 コンピュータを信用して過度にのめり込むことは、注意しなければなりません。パソコンの画面に表示されている図形や文字は、仮想(virtual)の世界を示しています。現実(real)の実体と向き合うときは、コンピュータとは違う道具(ツール)や装置(デバイス)が必要です。家庭でパソコンを使う程度であれば、キーボードとモニタがあれば、ゲームをするか、インターネットと?いで情報の遣り取りをする楽しみ方で済ますことができます。しかし、モニタ上の図形や文字は一過性の表示ですので、記憶に残ることはあっても、何も実体はありません。実体のある印刷物を得たいとなるとプリンタが必要です。また、平面図形をコンピュータに取り込むには、逆向きの装置であるスキャナが必要ですので、かなり余分な出費になります。データを保存して再利用したいとなると、外部記憶装置を別に準備することも必要です。幾何学は、図形を学問的・抽象的に扱うときの拠り所です。実体の有る図形と関わるとき、寸法を測って数値化することと、寸法を元にして実体のある紙に図形として得るか、三次元的な実体ならば、それなりの加工をして制作します。この過程では、道具を手で使う作業が必須です。コンピュータは、その作業経過を模擬的に扱う(シミュレートする: simulate)ときに便利になりました。特に、三次元的な形状を扱うときにこの技術が効果的であって、あたかも眼の前に現実があるようにモニタ表示ができるようになりました。これを仮想現実(virtual reality)と言いますが、実体が無いことを理解しておかなければなりません。
2009.9 橋梁&都市PROJECT

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