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20. ズレを扱う幾何学

20.4 コンピュータアニメーション


20.4.2 カルマン渦列の作図

図20.2 円柱の後流に発生するKarman渦列(流体力学ハンドブック、丸善、1998)

 流体力学は、液体と気体とを含め、その運動と応力を解析する力学です。解析の結果を表すときは、流線の集合で図に描く可視化の技法を使います。流体をややマクロに見て粒子の動きでモデル化するとき、粒子が整然と列をなすように定常的に流れる状態を層流と言います。動きがランダムになっているのが乱流です。乱流全体を、粒子の運動でモデル化して追いかけるような理論式を提案して解析することは、古典的な流体力学ではあきらめていました。乱流は、渦のような動きがありますので、ズレが起こり、流線が壊れる流れになります。連続体としての理論式は、渦の個所で特異点になります。層流の中に円柱のような障害物を置くと、その後流に、向きが交互に変わる渦が周期的に発生することが知られています(図20.2)。これを解析したTheodore von Karman(1881-1963)に因んでカルマン渦列と言います。カルマンは、この渦の性質を統計力学の手法で解析し、渦列の間隔hと渦間隔lに一定の比率h/l=0.281があることを導いたのです(図20.3)。コンピュータを駆使して数値化解析で流線を描くことができるようになって、カルマン渦を動画で再現することができるようになりました。計算幾何学との接点がないように見えますが、流体について、円弧スベリの集合のような現象として紹介しました。

図20.3 交互に向きの違う渦列は安定した状態があること(同上)
2009.8 橋梁&都市PROJECT

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