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20. ズレを扱う幾何学

20.3 円弧スベリの解析


20.3.1 円の扱いが出る自然現象であること

 我々が住む地球表面の地殻は、巨大な岩石の塊です。人の寸法を基準として見れば、大地は不動に見えますが、想像を巡らして長い時間を縮めて観察すると、褶曲地層で見るように、活発な変形や動きがある塑性体です。地球上の営みとして、人類は、岩石や土も材料として構造物を建造してきました。近代構造物は、地上の人工的な造形に眼が向きますがが、それらを支える地盤や岩盤を扱う解析については、あまり注意を払いません。捉え所が無いようですが、地盤や岩盤は連続体の性質がありますので、地震波動が伝わり、スベリ破壊も起きます。自然の造形は、長い年月を経て見かけは安定した形状に落ち着いているのですが、短期間に人工的に手を加えると、建設と同時に破壊も多く経験することになります。宅地造成に関連して、土斜面に起こる円弧スベリは、比較的身近に起きる災害ですので、スベリを理論的に予測して、対策を提案する実用的な技術が研究されています。地すべりのような自然現象に、幾何学の円弧の扱いが顔を出すのは、実は非常に珍しい対象です。円弧は、図を補助的に使わないで、代数的に扱うと、感覚的な理解から遠のき、難解な問題になることがあります。一方、図形を描いて議論すると、感覚的に理解できる便利さがありますが、数値化して理解する段階で難渋します。両方の長所を生かすようなプログラミングツールとして、筆者は、Geometry-Basic(つめてG-BASIC)を利用しています。
2009.8 橋梁&都市PROJECT

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