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20. ズレを扱う幾何学

20.2 切断と剪断


20.2.3 幾何学的にみたズレ変形

 実体のある粘土のような塑性体は、眼に見えて分るように変形させることができます。しかし、この変形の過程を数学モデルにして追いかけることは手に余ります。コンピュータのモニタ上の図形は、抽象的に変形を扱うことができます。第9章で図形のアフィン変換射影変換とを説明しました。変形とは言わず、変換と言うことに注意します。これは、元図形の直線を別の直線に描き変える作図です。直線が曲線に変形する現実的な図形変換は、金太郎飴の製作過程のような塑性変形を考えると良いでしょう。一般的に考えると複雑ですので、数学的に扱い易い、特別な条件を考えます。その一つが、弾性針金の変形でモデル化するスプラインです。或る直線または曲線に沿わせてズラス作図操作は、殆ど扱うことはありません。最も基本的で実現可能なズレのモデルは、二つです。直線を挟む上下グループの相対的なズレと、円曲線に沿った相対的な回転ズレです。無限に広がった平面領域を考える図形では、局部的に円周に沿ったズレ以外、実現に無理があります。半無限の弾性体では、局部的に表面に作用する大きな力の周辺で剪断応力が大きくなって、ズレや亀裂が起こることがありますが、或る深さで止まります。土斜面の円弧スベリは、ズレが円周に沿って起こる力学問題として扱います。
2009.8 橋梁&都市PROJECT

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