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20. ズレを扱う幾何学

20.1 地すべりと山崩れ


20.1.6 予測可能な崩壊モデル

 材料の破壊は予測の難しい現象ですので、破壊の説明は、殆どが結果論ですし、結果の整理も確率・統計的にならざるを得ません。統計力学の用語があります。或る条件から必然的に結果を得る解析的な見方からすると、サイコロを振るような曖昧さを持った扱いを軽蔑した、アインシュタインのような有名な学者もいました。しかし、予測に利用できるモデルがあると、気休め的ではあっても、安全対策を工夫することに役たちます。その一つの例が、斜面の安定計算に使う円弧スベリのモデルです。形を持つ連続体の二つの部分が、接触しながら、全体としての体積または面積変化なしに移動する変形がスベリ(辷り・滑り)です。辷る境界面は、二次元的に扱うときは、直線か円弧しかありません。直線は無限に半径の大きな円弧と見ることができます。そして、力学的には、摩擦力が面に沿って作用することを考えます。スベリが起きていない状態で、或る面を介して、面に沿って互い違いに作用して釣合う力を、材料力学では剪断力と言います。
2009.8 橋梁&都市PROJECT

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