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20. ズレを扱う幾何学

20.1 地すべりと山崩れ


20.1.5 ミクロ破壊の進行とマクロ破壊の発現がある

 粉体は、多くの場合、人工的に材料を粉砕(破壊)して製造する材料です。河川や海岸の砂は、自然が造形した粉体ですが、構造物として力の伝達に使う材料としては信頼していません。比喩的に使う「砂上の楼閣」がそれを表しています。理論的に見れば、固体が破壊された極限が粉体です。しかし、その途中過程に種々の破壊が現れます。外から見れば形がそのまま残っていても、実は強度を失っていて、何かのきっかけで、眼に見える破壊変形に進むことがあります。材料試験をすると、破壊は、材料内部でミクロ破壊に始まります。コンクリートや岩石などは、マイクロフォンを表面に当てると、ミクロ破壊を音で聴くことができます。地震の予兆も特殊な音が発生することがあるようでして、動物がそれを敏感に感じ取って異常行動を起こす、と想像されています。金属材料では、塑性変形の段階は、破壊とは言いませんが、実社会では大きな変形も破壊に含めます。力を受け持つ構造材料は、疲労の蓄積があると、強度が徐々に下がって行く性質があります。疲労が進む現象のメカニズムは良く分りませんが、材料の疲労は回復せず、疲労が進むと脆くなる性質があり、部分的な破壊が亀裂として現れます。強度が要求される航空機・自動車・機械部品は、亀裂が観察されると全体破壊の前兆と見ますし、亀裂が無い場合であっても、或る利用回数に制限を設け、十分な機能が未だ残っている状態であっても、安全のために新しい材料に取り替える定期的なオーバーホールをします。一般に、亀裂があると、眼に見えない破壊も急速に進行している状態と解釈しますので、最悪のマクロ破壊(崩壊)になる前に安全の対策を工夫します。
2009.8 橋梁&都市PROJECT

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