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20. ズレを扱う幾何学

20.1 地すべりと山崩れ


20.1.3 元に戻らない移動と変形

 固体は粒間の隙間が狭く、拘束も大きく、相対的な移動も変形もしないモデルです。トラスモデルは、粒間の隙間を弾性体の棒で結び、力の遣り取りをします。万有引力や電磁場のように、何もない空間(隙間)を介して力の遣り取りをする物理現象は、ここでは考えないことにします。弾性体と液体との中間に、粘土に代表される塑性体があります。これらをまとめて連続体と言います。細かく見るとき、弾性体と流体との中間の性質を一般的に扱う学問にレオロジー(Rheology)があります。塑性体のモデルは、元に戻る変形と戻らない変形の性質を扱います。全く変形を受け付けない連続体が固体です。ただし、固体力学は、solid state physicsの訳語ですが、扱う問題を広く捉え過ぎる用語です。惑星の運動などを扱うのは、質点の力学、寸法があると剛体の力学と使います。粘土を捏ねるのは、流体の攪拌のように意図的に、かつ、ランダムに粒を混ぜ合わせます。しかし、塑性変形をマクロにモデル化するときは、粒間の相対的な位置の変化がない条件を考えます。金太郎飴の断面図形のように、デフォルメがあっても、図形の本質が壊れる不連続な変形を考えなければ、塑性体も骨組みモデルで扱うことができます。しかし、ミクロに見れば、粒位置の入れ替えが起こります。延びの大きい金属材料は、原子の粒が転位(dislocation)して相対的な位置が変っても、つなぎの内部力が保存されて、見た目では破壊しない塑性変形が起こります。
2009.8 橋梁&都市PROJECT

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