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20. ズレを扱う幾何学

20.1 地すべりと山崩れ


20.1.2 移動を考える連続体

 水に代表される液体は、粒の集合と見ることもできます。ただし、粒と粒を結ぶ辺がなくて、粒単独が自由に動き回れるモデルです。液体の運動を、実体を持った粒の集合でモデル化するとき、隙間が必要ですし、粘性のような拘束も考えます。ただし、気体のような体積変化はしない(非圧縮性)、とする条件があります。流体の運動は、粒に識別を付けて運動を追いかけることができませんが、注目点(座標)を決めておいて、そこでの局部的な粒の運動の性質を解析的に求めます。しかし、数学的に解が得られる条件は非常に限られています。古典的な流体力学では、境界条件が複雑な定常的な流れも、また時間的に変化が起こる乱流も、理論的に再現する解析モデルの提案をあきらめていました。高速度・大容量のコンピュータが利用できるようになって、網目状の注目点での局部的な流体の運動を、全領域に広げて統一的に扱うことができるようになりました。テレビで、気象衛星で観測した雲の動きを見るのが一つの例です。これは過去の映像を再現しているのですが、現在までの運動の法則が見つかれば、現在の状態を初期条件として近未来の運動が予測できます。これが天気予報として応用されています。流体運動の基本的な法則は比較的簡単ですが、コンピュータを利用した力ずくの数値計算が必要です。一般に、大規模・大容量の数値計算を或る有限時間内で可能にするには、ハードウエア・ソフトウエアを含めた全体で研究しなければなりませんので、この分野を計算工学と総称するようになりました。
2009.8 橋梁&都市PROJECT

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